【スイス海外研修5日目午後】2022.10.13

5日目の午後からは、事業体Forst Galm Murtenseeの事務所の南にあるガルムヴァルト(Galmwald)という森を訪れました。ここは、ナポレオンの征服からの奪還など、数々の歴史が残っている場所で、同時に、森林の履歴も追える森だそうです。ここは、トーマスさんの管轄のエリアです。あちこちに解説のための看板があり、土中環境のことや木材に関することなどが説明されています。

トーマスさん曰く、この森林は15世紀にこの地域がフランスから勝ち取った後、住民による乱伐が起こり、資源力が極端に減少。その後、回復したものの1713年に州が皆伐し、ナラを150ha植林したそうです。ナラを植林したのは、豚のえさになるドングリを生産するためだったとのことです。ナラは成長に強い光を必要とするので天然更新が難しく、人為でコントロールするしかないとのことでした。このガルムヴァルトでは、ナラ森を育てるために様々な技術的試行をしてきたといいます。

例えば、昔はナラをhaあたり1万本密植し間伐を繰り返すことで、材質がよく通直なナラを育てる施業をしていたとのこと。その森は今でも、間伐を繰り返して成長しているとのことです。他の施業地では、ナラを自然の分布に見立てて群状に植栽し、将来はその一群のうちの1本が大きくなることを想定したうえ方をしていました。

他のナラ林では、トウヒやブナを選択的に除伐してナラを大きく育てているところも見学。この森には300年生のナラが育っているが、300年生のナラは使えるものなら大変価値がつくものの、伐採してからでないと使用の可否が判断できないため、この場所では経営はせず、もう少し若い林分で択伐を行っているとのことでした。

この森では、ナラの択伐林を見学しましたが、様々な創意工夫の積み重ねがあることがわかりました。そうした技術や経験はフォレスターからフォレスターへと引き継がれ、今に至るようです。

自然の観察や施業と調査を繰り返してそこから学ぶという土壌がスイスにはあるようです。また、現場からのボトムアップで施業方法を決めていく方法は、奈良県でも応用していきたいと思いました。

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